講演会(ご案内・ご報告)

第16回講演会

プログラム1
『理事長あいさつ』
NPO「丸山ワクチンとがんを考える会」
理事長:丸山 茂雄


 ただいまご紹介いただきました丸山でございます。 本年3月、前理事長の江上先生が辞任されました後を私が引き継ぐことになりました。 この会は、はじめに理事長が短いお話をすることになっております。 私は、医者でもありませんし、医学の研究者でもございませんので、この後のお二人の先生のお話の前に簡単な所感を述べるということで、私が登壇したわけでございます。
 きょう私がお話ししようと思いますのは、最近思い出して読んだ本なのですが、吉村昭という作家が『白い航跡』という本をお書きになりました。 この方は2006年にお亡くなりになりました。 奥様は、同じ小説家の津村節子さんで、ご夫婦でまことに有名な文学者であります。 この『白い航跡』というのは、高木兼寛という医学者の一生を書いた本であります。 この方は、脚気をどうしたら治すことができるかということを一生かけておやりになった方であります。 高木兼寛は江戸時代に生まれ、明治維新の国内で内乱があったときに、外科医として医学を始められて、明治に入って海軍に勤められた。 明治の7年か8年ぐらいにイギリスに留学して、イギリス流の医学をマスターして日本に帰ってこられました。
 陸軍にももちろん、医療を担当するセクションがあるわけで、そこにいたのが森林太郎、有名な文学者の森鴎外であります。 この方はドイツに留学されました。 ここに海軍はイギリス系、それから陸軍はドイツ系という、その後、終戦まで日本にずっと流れた海軍と陸軍の大きな流れの違いがあるのです。
イギリスから戻ってきた高木兼寛さんがびっくりしたのが、当時日本の海軍に脚気というのが大変はやっていて、それによって死ぬ水兵、海軍の兵士がたくさんいるということだったわけです。 後から考えればビタミン不足だということなんですけれども、それが全然わからずに観察によって見出したのが、結局、解決法としては栄養のバランスをとらなきゃいけない、それには白米だけではなく麦をたくさん食事の中に取り入れなければ脚気は根絶できないというふうに彼は結論づけて、海軍は麦飯を食事の中に取り入れるということをしました。
 一方で、ドイツに留学した森林太郎を初めとした陸軍のお医者さんたちは、その当時、ドイツではコッホがいろんな業績を上げていて、いろんな細菌が次々と発見されて、あらゆる病気が細菌というもので解決するという、そういう時代だったものですから、陸軍は脚気が基本的には脚気菌という病原菌によって起こされるという説をとって、兵士に対する白米の支給をずっと続けました。 日清戦争、日露戦争という2つの戦争のときに、既に海軍は麦飯を食事として与えられていて、脚気によって死ぬ兵士の数はほとんどいなかったのでありますが、陸軍は白米至上主義で脚気に対する対策を何も取らなかったため、陸軍は戦死者よりも脚気による死亡者がとてつもなく多いという時代がずっと続いたわけであります。 これは大変な大論争になったんですが、陸軍の主張は、栄養のバランスというのは何の根拠もないということで、病原菌説というのは引っ込めなかった。 でも、その病原菌というのは発見されないまま5年たち、10年たち、15年たちということが続いたわけです。
 結局のところ、脚気というのは、その後に鈴木梅太郎という日本の科学者がビタミンをを発見し、ビタミンBというのが脚気という病気を治すのにどうしても必要だということが大正14年に確定したわけであります。 わかるまでに何年かかったかというと、日清戦争が1894年で、その前から脚気という病気というのが顕在化していたにもかかわらず最終的に決着したのは大正14年ですから、約四十数年間かかっているわけですね。 それを思うと、一つの病気というものを治すのに余りにも時間がかかるのは何かというならば、その治る理由、学理、学問、理屈というものがはっきりしないというふうに思い込んじゃった学者たちは、どんなに科学的だと、実証的にそういうものがあったとしても、それをなかなか訂正することはしないんだなということがわかるわけであります。
丸山ワクチンはなぜ治るかわからないけれども、治る患者さんがたくさんいるということはわかってはいる。 なぜ治るのかかわからないというのが基本的に丸山ワクチンが世の中でなかなか認められない理由であります。 高橋先生は、それを突き詰められて、これが丸山ワクチンが効く理由なんではないかというのをこの十数年来研究なされていて、きょうその最も新しい部分というのをご紹介いただけるわけであります。
 ビタミンの発見によってみんながようやく納得し、脚気という病気が麦飯を食べると具合がいいという物すごくシンプルな結論を日本の軍隊が採用するまでに四十数年かかったたという事実が過去にありました。 同じように、高橋先生の研究によって、丸山ワクチンが、あっ、なるほどねということで皆さんが納得するような時期が近々来るのではないかというふうに思っています。 ただ、ビタミンが発見されても、納得して脚気菌というものの意見を取り下げたのは、ビタミンが発見されて10年間たってからのことでありますから、まだこれから先も長い時間がかかるかもしれませんが、そういう時代を迎えつつあるんではないかというふうに期待しております。
 きょうはは高橋先生のお話の後に、藤田先生がまた、がんの新しい、どうして起こるのかというおもしろいお話をお聞かせ願えることになっています。 どうぞお二方の先生のお話を皆さんお聞きください。(拍手)