講演会(ご案内・ご報告)

第15回講演会

プログラム3
『丸山ワクチンはやっぱり「がん」に効く!?』
創薬から実に70余年、丸山ワクチン最新取材報告
ジャーナリスト
ノンフィクション作家
森 省歩 氏


1.私が「がん患者」として「丸山ワクチン」を選択した理由

皆さん、こんにちは。 ただいまご紹介にあずかりましたジャーナリストの森省歩と申します。 本日はよろしくお願いいたします。
ただ今の和田洋巳先生のご講演を拝聴しておりまして、なるほど、「がんに負けない心と体をつくる」というのはこういうことだったのか、と納得がいきました。
実は、和田先生には以前、雑誌の取材などで何度かお話をうかがったことがあるのですが、本日のお話のうち、和田先生の『からすま和田クリニック』に来られるIV期のがん患者さんの実に17%から20%もの患者さんで劇的な病態の改善が見られたという事実、「劇的寛解例」というんでしょうかね、この事実はとりわけ注目に値するお話だったと思います。
実は、京都にある和田先生のクリニックの近くには、古い京町屋を改修した患者さんのサロンがございまして、以前、その患者さんのサロンでIV期の患者さんへの取材をさせていただいたことがあるんですけれども、ほとんどの方が本当にお元気で生き生きとされていたのを拝見しております。 そんなことも今、お話をうかがっていて思い出しました。
がんにかかると、通常は治療ガイドラインに収載されている標準的な治療メニューを受けることになるわけですけれども、今の先生のお話をうかがっていますと、例えば、まずは標準治療メニューの中から患者さんがご自身の病態や人生観などに見合った治療メニューを「戦略的に選択」する。 そして、和田先生が言われたように、「食生活の改善」などを通じて、がんに負けない心と体をつくる。 さらに言えば、丸山千里先生が創薬された「丸山ワクチン」、その投与も受けてみる――。 こんな選択肢もあっていいのかなと、強く感じました。 和田先生、興味深いお話をありがとうございました。
それで、今ここに立っている私ですけれども、私は和田先生のように医師ではございませんし、取り立てて医療に詳しいというわけでもございません。 そんな私がなぜ今ここに立っているのか、まずはそのあたりからお話をさせていただこうかと思っております。
お手元にお配りしたレジュメにも少し書いておきましたけれども、実は私も、今からちょうど5年前、2012年5月に東大病院で大腸がんの切除手術を受けた経過観察中の身でございます。 手術は腹腔鏡によるものだったんですが、切除範囲はS状結腸の全部と、S状結腸に所属しているリンパ節19個、さらには、がんが腸閉塞寸前になるぐらい大きくなっていたものですから、病巣部が腹膜に癒着していたそうで、その部分の腹膜も取りました。 人生で初めての手術だったこともありまして、身体的にも心理的にも大変な思いをしたわけです。
そして、術後の病理検査の結果、残念ながら、第2群所属リンパ節、つまり中間リンパ節の2カ所に転移がありまして、先生からは「病期はステージIIIaです」と言われました。
標準治療ですと、大腸がん、S状結腸がんの場合ですけれども、ステージIIでリスクの高い人あたりから術後の抗がん剤治療をやらなきゃいけないということで、東大病院の先生からは6カ月間、抗がん剤を服用しなさいと言われました。 ですが、私の稼業はジャーナリストでございまして、夜討ち朝駆けの取材やら徹夜の執筆やら、とてもではありませんが抗がん剤を飲むわけにいかなかったんですね。
おまけに、ちょっと個人的なことを申し上げますと、ちょうど私が退院したその直後に、私の父に末期の膀胱がんが見つかりまして、その年のうちに父が亡くなるという出来事もありました。 息子と夫ががんにかかったということで、今度は母親が初期の認知症にかかりましてね、よくぞまあこんなことが次から次へ、という状況だったわけです。
そんな中、緩やかな抗がん剤とはいっても、それで寝込むわけにはとてもいかなかったものですから、抗がん剤治療は辞退いたしました。 そのときに勧められた抗がん剤はUFT+ユーゼル、ご存じの方もおられるかもしれませんけれども、これは和田先生が肺がんの臨床試験に関わった薬でもあるそうです。 その和田先生を前にこの薬を飲まなかったと申し上げるのは少し気が引けますが、当時はそんな状況にありました。
ただ、そうはいっても、やはり何もしないで再発を待つというのは心理的にかなりきついんですね。 それで、何かしたいと。 実は、手術を受ける前から、私には「何か困ったことがあったらアレを使おう」と思っていた薬があったんです。 それが丸山ワクチンだったわけです。 それで、日本医大のほうに参りましてワクチンの投与を受ける手続きをしたんですが、東大の先生に「丸山ワクチンをやりたいのですが」と話した際、患者思いのとてもいい先生だったんですけれども、やはり多少複雑な顔をされておりましたね。 抗がん剤治療は受けない、とも申し上げていたので、先生としては少し困っておられたのかもしれません。
ちなみに、皆さんに情報としてお伝えしておきますが、丸山ワクチンンの投与を受けるとなると、有償治験のための主治医を見つけなければなりませんよね。 私の場合、神奈川県の湯河原というところに住んでおりますから、ネットでいろいろ検索をいたしまして、藤沢市の辻堂にある『やまぐちクリニック』というところにお願いをいたしました。 このクリニックの院長をされている山口眞人先生は日本医大のご出身で、日本医大病院の麻酔科で勤務をされた後、現在のクリニックを開かれたそうですが、山口先生は丸山ワクチンの有償治験の投与の方法についても非常に柔軟に対応してくれます。 もし今、主治医が見つからずにお困りの方で、距離的に通院可能な方がおられましたら、辻堂の『やまぐちクリニック』にお問い合わせをされてみてはいかがでしょうか。 丸山ワクチンにたいへん理解のある先生です。


2.丸山ワクチンは本当に効くのか――自身の切実な問題として5年をかけて取材

ということで、私はそれ以降ずっと丸山ワクチンを打っているのですけれども、「丸山ワクチンは本当にがんに効くのか」という問題は、ジャーナリストとしても私個人としても切実なものでした。 何しろ自分の命がかかっているわけです。 それで、この5年間、かなりのエネルギーを丸山ワクチンの取材に費やしてきました。
取材では多くの方々にお世話になりました。 お手元のレジュメにも書いておきましたけれども、日本医科大学付属病院ワクチン療法研究施設の前所長を務められた永積惇先生、永積先生の後任を務めておられる江上格先生、あるいは丸山ワクチンの作用機序の研究で皆さんご存じの日本医科大学微生物学・免疫学教室主任教授の高橋秀実先生、また、後で出てきますけれども、丸山ワクチンに関する歴史的なニューエビデンス、その臨床試験の責任者を務められた埼玉医科大学国際医療センター婦人科腫瘍科教授の藤原恵一先生、それから患者さんたちの「かたろう会」というのが患者・家族の会の主催で毎月やられているようですけれども、そこに来られる患者さんなどなど、皆さんから貴重なお話をおうかがいいたしました。 もちろん、本日ご講演された和田先生からもお話をうかがっております。

図表1

それで、ようやく記事になった最初の記事がこれです。 『週刊文春』2015年7月9日号に発表した記事です。 ちょっと裏話を申し上げますと、当初、私は「丸山ワクチンはやっぱりがんに効く」というタイトルにしてくれと言ったんですけど、さすがにそれは言い過ぎだろうと言われまして、それで「丸山ワクチン、私には効いた」、こういうタイトルに落ち着きました。
この記事は5ページものだったんですが、実は、この続きを何度か連載でやらせてほしいと言っていたんですけれども、なかなか思うようにまいりませんでした。
それで、1年ぐらいまた取材を続けながら、連載をやらせてくれる雑誌はないかと、あちこち歩き回っておりました。 そんな中、第2弾として発表させていただいたのが『サンデー毎日』のこの記事でございます。 これは1回5ページで連続5回という、かなりの分量を与えていただきました。 それでも書き足りないことはあったんですけれども、私の思いの丈をかなり書き込むことができたと自負しております。

図表2

3.ASCO(米国臨床腫瘍学会)2013の発表から読み解く丸山ワクチンの有効性

それで、本日は私が今まで5年間をかけて取材してきた以上のような経緯を踏まえまして、特に丸山ワクチンの有効性については皆さん一番気にされていると思いますので、そこにテーマを絞る形でいくつか報告をさせていただきたいと思っております。
素材にしたいのは、先ほど申し上げた埼玉医科大学の藤原恵一先生が2013年6月にASCO、米国臨床腫瘍学会で発表された、例の歴史的エビデンス、これをもとに、レジュメにも書いてあります3点を中心にいろいろ考えていきたいなと思っております。


4.驚きの解析結果 (1)

生存率を10%も向上させた丸山ワクチンの実力/統計的有意差と臨床的有意差

それで、第1点目ですけれども、レジュメには「生存率を10%も向上させた丸山ワクチンの実力─統計的有意差と臨床的有意差」と書いておきましたが、どういうことかと申しますと、まず、この図はご存じの方も多いのではないかと思います。 3年前のこの会で藤原恵一先生がご報告されたグラフでございます。

図表3

先ほど和田先生もこのグラフを取り上げておられましたけれども、このグラフは2013年のASCOで藤原先生が発表された翌年に、『Annals of Oncology』という英文雑誌に寄稿されたものです。 世界的に有名な医学雑誌ですね。
少しだけ前提となる事柄を説明しておきますけれども、この臨床試験というのは、実は丸山千里先生が亡くなられた1992年に始まっているんですね。 いろんな紆余曲折があったんですけれども、それは先ほどの記事に書いておきましたので、ご興味のある方は読んでいただきたいんですが、藤原先生いわく「どんでん返しの連続、瓢箪から駒の連続だった」と。 そして最終的に、20年かけてたどり着いたのが、この歴史的なエビデンスだったわけです。
この臨床試験は子宮頸がんIII期の患者さんを中心に240人ぐらいの方にご参加いただいて、それをおよそ120人と120人の2つのグループに分け、一方には放射線治療とプラセボ、もう一方には放射線治療とZ100を打っていただく、という試験でした。 Z100というのは試薬のコードネームなんですけれども、濃度が1cc当たり0.2マイクログラムですから、有償治験で使っているB液と同じ濃度の、ヒト型結核菌からの熱水抽出物質ということであります。
結果は劇的でした。 ちょうどこの60カ月のところ、いわゆる5年生存率ですね、この5年生存率で75.7対65.8ですから、およそ10%もの差がついた。 実はこれ、藤原先生からお聞きしたんですけれども、ASCOでこの数字を発表した時、会場がどよめいたと言っていましたね。 それくらい、この10%という数字には強烈なインパクトがあったわけです。
ちなみに、ASCOというのは毎年6月に米国のシカゴで行われる世界有数のがん学会なんですけれども、特にここのオーラルプレゼンテーションといって、口頭で発表できるのは非常に限られた方らしいんですね。 藤原先生は婦人科のセッションで発表されたわけですけれども、そのことをもってしても、事前審査の段階からこの歴史的なエビデンスが、日本は別としても、海外では非常に注目されていたということがわかると思います。
で、本題はここからなんですが、なぜ今、ご存じの方も多いこのグラフをあえて取り上げたのかということなんですけれども、実は、これは先ほども和田先生がおっしゃいましたが、このP値というのが0.05よりも低いと統計的有意差がある、高いと統計的有意差がない、というふうに解析されるわけですね。 このグラフの場合、P値が0.07ですから、つまり0.05より高いわけですから、「統計的有意差なし」とされたんです。 それで、統計的有意差がない以上、ゼリア新薬さんも、残念ながら厚生労働省に新薬としての申請はできない、ということで、申請を断念されたという経緯があったわけです。
ですが、私自身は、いろいろと取材を積み重ねる中で、「統計的有意差なし」でこれを片づけてしまっていいのかという疑問、そういう問題意識がずっとございました。 これから、そのことをかいつまんでお話ししようと思っています。
結論から先に申し上げますと、P値が0.07で統計的有意差がないから結果には意味がない、つまり丸山ワクチンはがんに効かないと、こういうことにはならないと私は考えています。
藤原先生にはおっしゃりづらいこともあったかと思いますが、私はジャーナリストとしてかなり突っ込んだ質問をさせていただきました。 そのような取材を通じて、統計的有意差が出なかった理由や、その過程や中身を検証していったわけです。 そうすると、いろいろな真実が明らかになってきました。
例えば、なぜ統計的有意差が出なかったかと申しますと、先ほど臨床試験に参加した患者さんはIII期の患者さんが中心だったと申し上げましたけれども、当初はII期の方、III期の方、I期の方の割合を決めて、その上でIII期の患者さんを中心にするとデザインしていたわけですね。 ところが、私も臨床試験に参加したい、丸山ワクチンを打ちたい、ということなどもあって、II期の患者さんの割合が予想以上に膨れ上がってしまったそうです。 当然、II期の患者さんはIII期の患者さんより予後がよいわけですから、全体の生存率も上がってきますよね。 つまり、この5年生存率の部分が当初の予想より上がってしまうわけです。
実は、生存率が上がって成績がよくなった場合、患者さんの母数を増やさないと統計的有意差が出ない、という現実があるそうです。 藤原先生によると、このときの120人対120人では統計的有意差は出なかったけれども、仮にあと150人ぐらい足して、例えば200人対200人で結果を出せば、確実に統計的有意差は出ただろうと、こういうふうにおっしゃっています。 私もそうだと思います。
もう一つは、この臨床試験は5年で打ち切られたんですね。 打ち切った理由というのは、患者さんを7年も10年も臨床試験で引っ張ることはできない、つまり人道的な理由から5年で臨床試験を打ち切ったわけです。 もともとの試験のデザインもそういうものだったそうなんですけれども、仮に10年間追跡していった場合にどうなるかというと、先ほどのように患者さんの母数を増やさなくても、これもまず間違いなく統計的有意差は出ただろうと、藤原先生はおっしゃっています。
この2つの事実をもってしても、解析上、有意差なしという結果が出ただけの話で、事実上、有意差はあったと見ていいのではないか、と私は考えています。
それから、私の取材したPMDA、厚労省の機関で医薬品医療機器総合機構というところですが、新薬を認可するかどうかの審査はこのPMDAが行っています。 ということで、ここの関係者の方にも取材をしてみたんですが、一般的には今回の結果でも認可は下りたのではないか、ただし、丸山ワクチンの場合にはそうはいかない可能性が高かっただろうと、こんなふうにおっしゃっています。
もう少し申しますと、PMDAが、これだけの結果が出たのだからいいじゃないかということで、仮にゴーサインを出そうとしてもなかなか本省が首を縦に振ってくれない、という事情もあるようでした。 要するに、厚労省内の一部には、いまだに丸山ワクチンに対する厳しい声があるということでございます。
ただし、このことを逆から考えれば、丸山ワクチンはそれだけがんに効く、ということになるのではないでしょうか。 お医者さんはうかつなことは口にできないでしょうが、私は単なる素浪人ですから気楽に申し上げますが、丸山ワクチンはがんに効くはずです。 しかも、劇的に効くはずだと、私は思っています。
また、今回の結果を臨床的に見ると、さらに興味深いことがわかってきます。 藤原先生もおっしゃっていましたけれども、例えば、再発・転移を見た患者さんに対する抗がん剤治療の場合、統計的有意差をどのように出すのかと言えば、今回のような指標、つまり5年生存率という指標は使いません。 なぜかと言えば、患者さんは5年も生きていないからです。
ということで、このような場合には、5年生存率ではなく、生存期間中央値という指標を使うわけです。 生存期間中央値というのは、ある治療をした場合に半分の患者さんが死ぬまでの期間、この期間で差を出すんですね。
その場合、どのような臨床試験になるかと言うと、例えばこれまでにあるAという抗がん剤を打った場合はこのような生存率曲線になる。 患者さんは短い期間でどんどんなくなっていくわけです。 そこで、Bという新しい抗がん剤の効果を調べたい時は、これまでのAという抗がん剤に新しいBという認可してほしい抗がん薬を足すわけです。 A+Bでやるわけです。
そうすると、少しいい結果が出る。 それでも5年生存率は取れませんから、患者さんが半分亡くなるまでの期間、つまり生存期間中央値での差を見るわけです。 例えば、何年もかけて臨床試験をやって、生存期間中央値で生存期間が2カ月延びたという結果が出るわけです。 そして、Bという抗がん剤を足すと、生存期間中央値が2カ月延びた。 これは効く、ということで厚労省がBという抗がん剤を認可するわけです。
しかし、このような臨床の実態から考えると、丸山ワクチンの場合、5年生存率で10%もの差が出たというのは、まさに驚異的な数字だと言わざるを得ないわけです。 その意味でも、残念ながら統計的有意差が出なかったとはいっても、その結果については臨床の実態という面からも見直されてしかるべきだろうと、私は考えています。
それから、少し注意喚起しておきますが、先の歴史的な臨床試験は子宮頸がんの患者さんが対象でした。 なぜ子宮頸がんでやったのかと言えば、子宮頸がんの場合、ここにあるように、今は「ケモラジ」といって放射線治療(ラジオセラピー)と抗がん剤治療(ケモセラピー)を併用する人が多いんですが、当時は放射線治療が標準治療のベースになっていたわけです。 そうすると、抗がん剤を使わない患者さんが大半なので、より丸山ワクチンの実力がはっきり見えるわけです。 それで子宮頸がんが選ばれたということでした。
さらに、念のために申し上げますと、これは子宮頸がんで出た結果ですけれども、ご存じのように、丸山ワクチンは、これまでのいろいろな研究の蓄積などからも明らかなように、全てのがんに効くわけです。 もちろん、5年生存率での差が10%なのか20%なのか5%なのか、その点はがん種によって変わってくるかもしれません。 ただ、この結果から強く示唆されるのは、丸山ワクチンは全てのがんに対して著効を示すのではないかということです。


5.驚きの解析結果 (2)

丸山ワクチンは「がんの増悪スピード」を49%低下させる

第2点目は次のグラフでございます。 ちょっとわかりづらいと思いますけど、これも先ほどの『Annals of Oncology』という雑誌に藤原先生が寄稿された中に出ているグラフでございます。

図表1

これまたすごい話なのですが、実は、こういう臨床試験を行うときには、その後にいろいろなデータ解析を個別にやるんですね。 これはその中の一つで、何を調べたかというと、子宮頸がんIII期の患者さんのがんの増悪するスピードがほかと比較してどのぐらい速かったのか、遅かったのかを調べています。 その指標がこの0.51というHRです。 ハザードレシオ、ハザード比というんですけれども、統計処理のときにこの値を使っていろいろ評価するわけです。
この場合、HR、ハザード比が1というのはどういうことかというと、丸山ワクチンの投与を受けていない人、何もしていない人のがんの増悪するスピードを基準値として1と置いた場合に、III期で丸山ワクチンの投与を受けていた人はどのぐらいのスピードだったかという比率を表しているんです。 これ、0.51ですね。 1に対して0.51ということは約半分です。 ということは、丸山ワクチンの投与を受けた人は、受けていない人の2分の1のスピードでしかがんが増悪しなかったということです。 これもかなり画期的なことですよね。
これまたちょっとわかりづらいんですが、これは信頼区間といって、統計的有意差にかかわる数字なんですが、0.28から0.94となっています。 この右のほうの上限値のほうが問題なんですけれども、ここに0.94とありますが、これが1を超えてしまうと統計的有意差がないそうです。 ですが、これを見ますと、III期の人で0.94ですから、有意差があるんですよね。 つまり、統計的有意差のある解析結果が出てきたわけです。
III期の患者さんにおいては、がんの増悪するスピードが半分になったということです。 半分になったということは、2倍長く生きられるとも言えるわけですね。 あるいは、がんで亡くなる場合は、がん増悪して転移などを起こして、単臓器不全で亡くなったり、多臓器不全で亡くなったりするわけです。 つまり、増悪するスピードが2分の1になったということは、がんで亡くなるリスクを半分に減らしている、というふうに言いかえることもできるわけです。
しかも、先ほど申し上げましたように、この結果には統計的有意差がありました。 まさに画期的な結果だと、私は考えています。
もちろん、これは集団のエビデンスですので、個々の患者さんにおいては、2倍以上長生きする人もいれば、もうちょっと短く亡くなる人もいて、ばらつきはあるんですけれども、それにしても、III期に限った話にはなりますが、生存期間が2倍に延びるというのは通常では考えられない驚くべき数字だと思います。
ちなみに、この上の赤線にはオーバーオールと書いてありますけれども、要するに、参加した患者さん全体を対象とした数値です。 これはHR0.65と出ていますけれども、信頼区間上限は1.04ですから1を超えてしまっていますよね。 ですから、これは先ほども言ったように、全体で見ると統計的有意差はないんですけれども、III期だけ取り出せばこのように統計的有意差があったわけです。 要するに、子宮頸がんIII期の患者さんの場合、丸山ワクチンの投与を受けると2倍長く生きられる、ということがわかったわけですね。
もちろん、ここだけを取り出して統計的有意差があったというのはルール違反と言われています。 もともと臨床試験というのは初めに試験のデザインをして、そのデザインにおいて勝負をするわけですから、一部分だけを取り出して、「やった、やった」とは言えないわけです。 お医者さんの場合、特にそうは言えません。 ですが、先ほども言ったように私は単なる素浪人ですから、「統計的有意差があるのだから、子宮頸がんIII期の患者さんの場合、2倍長く生きられる」と強調しておきたいと思います。
で、ここからは推測になりますが、先ほども申し上げたように、丸山ワクチンはあらゆるがんに効くということが、創薬以降70年余にわたる研究からわかっています。 エビデンスのレベルは低くても、その点はちゃんと出ているわけです。 そこから考えると、子宮頸がんのIII期の患者さんに限らず、あらゆるステージの子宮頸がんの患者さん、あるいはあらゆるがんの、あらゆるステージの患者さんに対して、丸山ワクチンが延命効果を示すだろうということが強く示唆されるわけです。
ちなみに、臨床試験の責任者を務めた藤原先生にインタビューしたとき、藤原先生は次のようにおっしゃっていました。 子宮頸がんが進行している患者さんには、一般的に放射線と抗がん剤による治療が標準的に行われている。 現に自分も行っている。 しかし、この結果を見ると、「放射線+抗がん剤」ではなく、「放射線+丸山ワクチン」でやったほうが患者さんにとってずっといいのではないか。 そういう可能性があるのではないかと、そういうふうにおっしゃっていました。 それくらい劇的な結果だったわけです。


6.驚きの解析結果 (3)

丸山ワクチンは「発がんのリスク」を4分の1に抑え込む

第3点目は次のスライドなんですけれども、これは『MedIcal ASAHI』2013年10月号に所収されていたデータを拝借いたしました。

図表1

このデータは何を示しているかというと、臨床試験を行う場合、例えば丸山ワクチンの臨床試験ですと、丸山ワクチンを使ったためにどういう有害事象が患者さんに起きたかということも報告しなければなりません。 そして、これは5年間の試験期間中、全患者さんのうち新たにがんにかかった人の数を追跡したものです。
どういう結果が出たかといいますと、Nというのは人数なんですけれども、Z100、つまり丸山ワクチンB液と同じ濃度のものを打った方の中で、新たながんにかかった人は5年間で4人いたということを示しています。 こちらはプラセボですから偽薬を打たれた方、つまり放射線治療だけを受けた方ですが、12人でした。 4対12です。 3倍も違うんですね。
さらに言うと、丸山ワクチンのグループについては、乳がんで1人、胃がんで1人云々と書いてありまして、全部で4人おられるんですが、このうちのお1人は、後に良性腫瘍であることがわかったそうです。 とすると、丸山ワクチンを使った方は3人だけ新たながんにかかった。 逆に、使わなかった人は12人もがんにかかった、ということになるわけです。 3対12ですから、実際は4倍も違うわけです。
ということで、丸山ワクチンは発がんのリスクを4分の1に抑え込む、というふうに言えるのではないかということで、このデータを取り上げたわけです。
ただし、このデータには統計的有意差は認められませんでした。 ですが、それとは別に、臨床的な意味といいますか、臨床的な有意差は非常に大きいと思います。 患者さんの母数を考えると、3対12という差はなかなか出ないと思うからです。 母数が120人ですから、120人のうち一方は3人、一方は12人というのは、大変な差と言っていいのではないでしょうか。
この点については、藤原先生もこんなふうにおっしゃっていました。 3対12という差は臨床的には大いに意味のある驚くべき数字で、丸山ワクチンに発がん抑制効果があることが強く示唆される、と。 以上のことから、丸山ワクチンには著しい発がん抑制効果があると言えるのではないか、と私は考えています。
実際、予防的に丸山ワクチンを接種している方もおられるようです。 例えば、家族ががんにかかって自分もかかるかもしれないとか、あるいは遺伝子的に見てがんにかかりやすいとか、いろいろあるわけです。 こういった方は不安でしようがないわけです。 だから、自分も予防的に打ってみたいということで、ご相談に訪れる方がおられるそうです。 そして、ワクチン療法研究施設では、このような方もなるべく受け入れているそうです。
考えてみれば当然のことですよね。
例えば、ある人にがんが見つかったとします。 私もそうでしたけど、それでがん患者になるわけですが、ただ、この人ががん患者になったのはいつかと考えたら、それはがん発見されたときじゃないですよね。 医学的に言えば、がんは発見されるずっと前に発生し、検査機器の目に見える大きさにまで成長してきたわけです。 つまり、検査で見つかったときに、形式上、がん患者になっただけの話であって、もともとその人はがんが発見されるはるか以前からがん患者だったわけです。
このように考えれば、がんにかかる可能性が高い場合には、人道的見地から見ても、丸山ワクチンの投与を受ける道があってもいいし、現にそういう人たちにも門戸を開いているということでございます。
さらに、もう少し未来的な話をしますと、この講演会でもお馴染みの高橋秀実先生がやっておられる研究ですが、丸山ワクチンの作用機序に関連して、丸山ワクチンが皮膚の表面に存在する樹状細胞を活性化するという、ノーベル賞級の画期的な研究が今進んでいるんですが、そうなると、例えば丸山ワクチンを皮下注射で打たなくても、貼り薬にしたらどうなんだろうか、というアイデアも出てくるわけです。
実は、これは高橋先生がおっしゃっていたアイデアなんですが、樹状細胞は皮膚の表皮から1ミリ以下のところに多く存在しているわけですから、丸山ワクチンが貼り薬、つまりパッチの形になっていれば、がんの予防としてもたいへん使い勝手がいいわけです。 薬局やコンビニに売っていて気軽に貼ることができる。 これは夢のようなお話ですけど、高橋先生のお話をお聞きしていて、なるほどな、と思いました。
仮にそのような貼り薬が普及する時代が来たら、おそらくがんにかかる方も激減するのではないでしょうか。 医療経済の面から考えても意義があると私は思っているんですが、どんなものでしょうか。
いずれにしても、丸山ワクチンには発がんを抑制する効果もあるということは、かなりの確からしさで言えるのではないかと、こんなふうに考えております。


7.期待される臨床試験「アジアトライアル」と有償治験中止への懸念

駆け足になって恐縮ですが、最後に、今行われている丸山ワクチンの大規模臨床試験、「アジアトライアル」と呼ばれる臨床試験、それから「丸山ワクチンの未来」ということで、少しだけお話をさせていただきます。
ゼリア新薬さんでは、2014年からアジアトライアルという大規模臨床試験に乗り出しています。 ご存じの方もおられると思いますが、実施されているのは日本、韓国、台湾、マレーシア、シンガポール、タイ、ベトナムの7つの国と地域です。 今度こそ確実な結果を出したいということで、今回は子宮頸がんIII期の患者さん、それも3b期の患者さんだけを600人集めて行われています。 この600人を300人、300人の2つのグループに分けて、先ほど申し上げた前回の臨床試験と同じ形でトライアルが進められています。
先ほども言ったように、前回の臨床試験では、患者さんの数が多ければ、あるいはIII期の患者さんだけを取り出せば、統計的有意差は出ていました。 ということで、今回は患者さんの数を増やした上で、IIIb期の患者さんだけを対象としています。 私が取材で得た感触では、結果が出るまでにはまだ7~8年かかるようですが、今度こそ文句のないエビデンスが出てくるのではないかと思われます。
ただし、文句のない結果が出たとしても、それで万々歳とはならないかもしれません。 つまり、厚労省がその結果を認め、アンサー20に続いて、丸山ワクチンが制がん剤として認可された場合、落とし穴があるのではないかということです。
例えば、厚労省の一部に先ほど申し上げたような雰囲気があるとすれば、子宮頸がんについて丸山ワクチンの使用が認められる一方で、これまでの有償治験が潰されてしまう可能性が危惧されます。 仮にこのような話になったとしたら元も子もありません。
実際、先ほどの臨床試験だけで20年もかかっているわけです。 そして、今度こそというアジアトライアルも10年くらいの年月が必要になります。 このような臨床試験を大腸がんだ、肺がんだ、腎臓がんだ、とやっていったら、それこそ何世紀もかかってしまうわけです。
丸山ワクチンにのみ認められている有償治験は、厚労省にとっては薬事行政上の最大の汚点なのかもしれません。 厚労省には今申し上げたような事態にならないようぜひお願いをしたいと同時に、今ある有償治験の存続については今後も声を上げ続けていかなければならないと、私は感じています。 私も丸山ワクチンを使用しているがん患者の一人として、微力ながら何かお力になれることがあればと思っております。
というところで、ちょうどお時間のようです。 ご清聴ありがとうございました。
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