講演会(ご案内・ご報告)

第15回講演会

プログラム1
『理事長あいさつ:がん免疫療法の現況と丸山ワクチンに想う』
NPO「丸山ワクチンとがんを考える会」
理事長:江上  格


 本日は週末で何かとご予定もあるかと思いますが、このように多数の方々に来ていただき有難うございました。
 この会も第15回となりました。 この間がん医療の進歩はめざましく、とくに最近は加速度を増している中で2012年に公表された新しい免疫療法、PD-1/PDL1免疫チェックポイント阻害剤の治験結果は、当初の想定を超え“進行癌にも有効性示す”免疫療法であることが検証されました。 これは従来のがん薬物療法を超えた、がん治療全体での位置づけを一変させる画期的な成果であると評価、報道され、その熱狂ぶりを表わす文言が紙上を賑わせました。 製薬会社、医学界一体となった研究と開発競争は激しさを増しており製薬業界大手の1社が一つの製品に300近い臨床試験という前代未聞の規模で進められ、今世界では想像を超える熾烈な競争が続いている状況が窺えます。
こうした状況は丸山ワクチンにどんな影響を及ぼしているのでしょうか。 丸山ワクチンは昭和56年の厚労省による“有償治験”と言う変則的な形での使用が現在も続いています。 その作用機序、効能について従前より学内外の多くの施設で基礎的、臨床的研究が報告されたものの、推論、あるいは空論と揶揄されました。 それに反論できなかったのは、丸山ワクチンが自然免疫の原理に根ざした医薬品であることに一因があると思います。 しばらく前まで手付かずで無視されるほど進歩のなかった自然免疫の解明が21世紀に入り急速な飛躍的進歩からがん免疫へと展開される中、丸山ワクチンの免疫応答メカニズムが解き明かされる時代の到来が期待されます。
今後丸山ワクチンの発展を期する上で、当施設現行の治験要綱に問題がないかを再確認すると、国立がん研究センター薬剤開発の原則、第Ⅲ相試験で求められている重要なことが、治療の効果と毒性、利便性が高い、また経済性(Cost/Benefit)に優れているという点であります。 また、最適なエンドポイントは全生存期間(OS)であり、QOLも評価・測定に困難性があるものの患者のベネフィットを直接反映するものとして実施することが求められています。 これらは概ね満たされていますが、いくつか見直しすべき点が見つかり改変作業中です。
当初衝撃的な治験結果で登場したPD-1チェックポイント阻害剤への大きな期待でその効果が強調され過ぎている面がみられ誤解が生じています。 現時点での多くのがんの奏効率は10~30%程度であり、実態は効果が見られないほうが多いのです。 今後、有効性を高めるには効果予測バイオマーカーの探索・同定を進めること、また抗腫瘍効果増強が期待される複合がん免疫療法には異なる作用機序、適切な組み合わせの免疫療法をめざした臨床試験を広く展開することが望まれています。
新規のがん免疫療法剤の臨床使用が拡大した結果、明らかにされた効果発現の特徴として、治療開始から有効な腫瘍免疫応答が引き起こるまでの一定時間経過した後に抗腫瘍反応が惹起される“遅延性効果”により、この間に腫瘍増大する現象が生じます。 これを「偽進行」(pseudo-progression)と称することがあります。 次に免疫療法の持続的効果として、長期間観察している癌治療患者のなかに残存病変がありながら癌の病勢悪化を伴わない例や、腫瘍縮小がないまま長期間安定している例が見られます。 このように免疫療法薬剤は、他の抗がん剤とは臨床効果発現パターンが異なる部分があることが明らかになったことで、効果と評価法の設定には臨床的特性を十分に考慮する必要があると思われ、新しい効果判定法が提唱とともに、その妥当性が示されつつあります。 この新規の免疫療法の特異的効果発現は、私共が従前より指摘している丸山ワクチン療法による特異的効果発現の特徴と概ね同様であります。
今後、免疫療法の新しい潮流がどの様に進化、展開し行くのか目が離せない状態が続くと予測されます。 また、私共は医療界が直面しているがん患者の高齢化、標準治療不適例や難治性癌にどう対応していくか、丸山ワクチンのがん免疫療法での果たす役割、立ち位置を明らかにする努力を続ける所存です。