講演会(ご案内・ご報告)

第13回講演会

プログラム3
『がん難民を激増させる標準治療の構造的欠陥』
すばるクリニック院長
伊丹 仁朗先生


1.標準治療の構造的欠陥が「がん難民」を生む

 皆様、こんにちは。岡山から参りましたすばるクリニックの伊丹と申します。
 本日は、「がん難民を激増させる標準的治療の構造的欠陥」ということで、私が日ごろから感じていることをお話ししまして、特に、そういう現状の中でがん闘病中の方々は何をすればよいのかという点について、皆様と一緒に考えてみたいと思います。

スライド1 【スライド1】

 さて、私は自己紹介のときにいつも「すばるクリニックの藪医者の伊丹でございます」と言っております。(スライド1)すると皆さん方は、大変謙遜しているなと思われるかもしれません。でも、そんなことはないんです。藪医者よりももっとレベルの低い医者がいるのです。
 それは何でしょう。土手医者なんです。土手医者は、土手に遮られて先が全く見えない。でも、藪医者は藪の隙間から少し向こうが見える。藪医者のほうがちょっとましなのです。
 でも、もっとレベルの高い医者がいますね。それはドローン医者です。大空に舞い上がって土手も藪も越えてすべて見えますからね。もう自信満々です。でも、ドローン医者はちょっと危ないところがあるのです。ときどき暴走して墜落するのです。最近ですと、群馬大学とか千葉県立がんセンターで腹腔鏡手術をがんの方にして、何人も死者が出ていますね。墜落するのです。ドローン医者は危ないところがありますね。
 やはり一番いいのは、凧医者ではないでしょうか。凧医者は、大空に舞い上がっても糸で地上とつながっていますから、暴走することがないですね。
 でも、今、標準治療に取り組んでいる医者の中には、凧医者は非常に少ないように私は思いますね。なぜかといいますのは、後の私の話を聞いていただければおわかりいただけるかもわかりません。
 近年、がん難民という方が非常に増えて、社会問題になっております。2005年の「AERA」にガン難民の特集記事が掲載されました。もう10年も前から「がん難民」ということが言われ出して、社会問題になっているのです。ここでいう「がん難民」の私の定義は、現在、我が国で可能なはずの手を尽くした治療が受けられずに、がんが悪化している方々を指すと考えています。
そのがん難民が発生するのには、やはり標準治療そのものに原因があると私は考えております。なぜかと言いますと、がん治療には5つの側面が必要ではないかと私は思っています。

スライド2 【スライド2】

 1つは、手術、放射線、抗がん剤のような物理的な側面ですね。それから免疫学的な側面、あるいは先進医療とのつながり、あるいは心理的な側面、そして人道的な側面、その5側面が必要だと思うのですが、今の標準治療では、物理的な側面しかほとんど行われていない。それ以外の側面は全く無視されているという現状があると思います。



2. 併用されない温熱療法

スライド3 【スライド3】

 では、どのような構造的欠陥があるかですが、まず、物理的な側面。これは手術、放射線、温熱療法、抗がん剤というような物理的な治療法です。ところが、物理的な側面の中でも、抗がん剤、放射線治療に温熱療法はほとんど全く併用されていないという現状があります。(スライド3)
 温熱療法といいますのは、サーモトロンという装置で患部を挟んで熱を加えます。がん細胞は熱に弱いですから、がん細胞が死滅する。そして周囲の免疫力が強くなりますから、力関係が大変よくなる、そして抗がん剤、免疫療法の効果もアップするという一石三鳥の治療法なんですね。これは何回でもできる、副作用がなく、体にやさしい治療法です。健康保険適用になっていまして、3カ月に8回のペースで3割負担で、8回分2万7,000円でできるんですね。そして繰り返し可能なわけです。

スライド4 【スライド4】

 この温熱療法にどの程度効果があるか、京都府立医大のデータが発表されております。(スライド4)それによりますと、切除不能の膵臓がんの場合のがん抑制率は、抗がん剤単独の場合は14%。温熱療法を同時併用しますと57%と大幅によくなるんです。また生存期間(中央値)は、抗がん剤単独ですと198日、一方、温熱療法を併用すると327日と大幅によくなるんです。
 では、この温熱療法が、現在がん治療に全国的にどのように活用されているでしょうか。今、全国のがん診療拠点病院は407カ所(2014年8月現在)あります。そのうち温熱療法を実施している病院は何カ所だと思われますか?たった15カ所、3.4%です。ほとんどのがん治療の現場では温熱療法が併用されていない。これではがんは治らないのではないでしょうか。
 また、温熱療法ができない県が17県もあるんですね。私は温熱無医村と呼んでいるんですけれども、これでは困りますね。保険適用になって、こんな効果のある治療法が全く無視されているのが標準治療の現状です。
 では、がん闘病中の人はこの現状にどう対処したらいいでしょうか。やはり通院中の病院で担当医に「温熱療法を併用してくれ」と要求する必要がありますね。装置を持っていなければ「導入してくれ」と要望する。それから、がん拠点病院等では患者の相談窓口へ行って「どうして温熱療法してくれないんだ」と訴える。病院として何とかしなければいけないという方向に持っていく活動、それが必要ではないかと思いますし、当面すぐには温熱療法ができなければ、他の病院に行って、あるいは温熱無医村にお住まいの方は、3カ月に8回ぐらいのものですから、他の都道府県に行って受けるといったことで対処する必要があるのではないでしょうか。


3.免疫力が無視されている標準治療

 次の構造的欠陥は免疫学的な側面です。  つまり、標準治療では免疫能の検査も免疫増強剤も、ほとんど使われていないんです。免疫力が無視されているわけです。


(1)生存率に影響するNK活性の強さ

 私どもの体内にはナチュラルキラー細胞という免疫細胞、リンパ球の一種がたくさん住んでいまして、がん細胞が発生すると、それを見つけ出して退治してくれているわけですね。このナチュラルキラー細胞の強さを測定するのがNK活性という検査です。

スライド5 【スライド5】

 これはアメリカのデータですけれども、これから手術する方のNK活性を調べて手術後の生存率を比較しています。(スライド5)そうしますと、3年生存率でみますと、NK活性が強い人の生存率と弱い人の生存率は2倍も違うのです。NK活性が中間の人は生存率もちょうど中間です。だから、がんの方の生存率というのは外科医の腕だけではないようですね。ご本人の免疫力がどれだけ強いかによって、その後の生存率に差が出てくるというわけです。
 ところが、この重要なNK活性の検査をがんセンターや各地のがん拠点病院など、どこも行っていないのです。それで抗がん剤や放射線をどんどんすれば、その副作用で免疫力が低下します。これではがんは治らないと思いますね。
 私どものクリニックには進行がんの人がたくさんおいでになります。がん診療拠点病院等でもう治療方法がないと言われて来られる人が非常にたくさんおられます。そういう方々の中でご希望の方には、このNK活性の検査をさせてもらっています。その結果、半数以上の方が正常値以下で、非常に低いです。正常範囲内の方でも、まだ中間値より低い方が多いですね。こういう重要な検査をしないばかりか、このNK活性を強くする治療もしないで行われているのが、今の標準治療の現状なのです。


(2)身近にある免疫増強剤

スライド6 【スライド6】

 では、免疫増強剤にはどんなものがあるかといいますと、身近にあるものとして、例えば乳酸菌シロタ株というのがあります。(スライド6)これは整腸剤として保険適用になっていまして、健康保険の3割負担で1日約10円です。それから肺内免疫増強剤のマクロライド剤というのがありますが、これも肺がんや肺転移のある方には効果が期待できます。3割負担で1日約24円です。さらに免疫増強漢方薬、十全大補湯や高麗人参もありますが、これらも保険適用の3割負担で1日約87円。あるいはサプリメントでは蜂の子というのもありますが、これは1日分約100円。そして、サプリメントのメラトニンは1日約60円と、こんな安いものが沢山あるのになぜ標準治療に取り入れて免疫増強剤として使わないのでしょうか。
 実例として乳酸菌シロタ株の効果をご紹介します。ある実験では、3週間この乳酸菌を飲んでもらいます。飲まない人と飲んでいる人の対照群を比較しますと、飲んでいる対照群では、なんと3週間で免疫力がぐっと上がるのです。そして3週間たったら一旦飲むのを中止します。でも、それから3週間はさらに強くなることが実験の結果に表れています。大変すごいことですね。ですから、乳酸菌シロタ株を続けて飲めばこの高い状態がずっと続きます。1日分約10円で免疫増強できるこんなにも良いものがあるのに、なぜ標準治療に取り入れないのでしょうか。
 もう一つは、サプリメントのメラトニンです。メラトニンというのは、どなたでも夜になると脳内に増えるホルモンです。このサプリメントを飲んでもっと増やしてやると、NK活性が強くなります。アメリカやヨーロッパでは実際がん治療に使われて、大変効果を上げています。脳腫瘍の方の放射線療法単独の1年生存率は6.3%とよくないです。でも、メラトニンを併用すると7倍、42.9%までよくなっています。これは大変なことです。
 また、肝臓がんの塞栓化学療法の2年生存率や、手術不能の肺がんでは、がん抑制率はメラトニンを併用するとやはり2倍もよくなりますし、これも1日分たった60円で、しかも副作用はないのです。こういうものをなぜ早く標準治療に導入しないのか。メラトニンは、国内でも簡単に製造できるごく普通の薬品です。
 抗がん剤の費用とちょっと比べてみますと、よく使われる抗がん剤にTS-1という内服薬があります。これは3割負担で1日分約726円かかるのです。これらに比べたら、今、申し上げた免疫療法剤は非常に安いです。こういうものをどんどん使って免疫を上げないとがんは治らないだろうと思います。


(3)漢方薬の併用

スライド7 【スライド7】

 免疫を増強する漢方薬があります。これはがん研有明病院から出された本ですけれども、がん研有明病院では、がん治療に漢方薬を併用しています。その結果奇跡的とも言える効果が上がった事例が多数あるということが、この本にまとめられています。(スライド7)でも、通常のがんセンター、がん拠点病院では漢方薬はほとんど全く使っていないですね。
 漢方薬の効果について、別の大学病院のデータを次にご紹介いたします。

スライド8 【スライド8】

 これは手術不能の大腸がんの方々の標準治療だけの生存曲線です。(スライド8)ところが、漢方薬の十全大補湯を併用するだけでこんなに生存率がよくなるのですね。これは驚くべきことです。漢方薬の偉力です。十全大補湯は、健康保険3割負担で1日分が約60円です。たった60円で生存率にこんなに差が出るのです。
 漢方薬は保険適用になっていまして、当然がんの場合は保険が使えます。でも、ほとんどの治療現場では使われていません。そういう免疫力を無視した現状で、では闘病中の人はどうしたらいいかということですが、まず、さっきの免疫力の検査、NK活性は別にがんセンターや高度な医療機関でなくても、しようと思えばどこでもできるのです。私の藪医者のクリニックでも簡単にできますから。採血して検査センターへ出せばいいだけです。5~6日したらNK活性のデータが返ってきます。どこのクリニック、開業医でもできますから、闘病中の人は「NK活性の検査をしてください」と頼めばいいのです。保険適用になっていませんから実費で3,200円ぐらいかかりますけれども、でも、そう頻繁にする検査ではありませんから、ぜひ受けられるといい。
 そして免疫を高める、健康保険を使える幾つかの薬がありますから、これも病院に頼んで処方してもらったらいいです。一般薬ですから。今の整腸剤なんて簡単に処方できますし、漢方薬でも、がん病名でも処方できますから。
 あと、メラトニン等はサプリメントですから、通販サイトで手に入ります。



4.初期治療と末期治療の間に必要な転移・再発予防


(1)転移のリスク検査

 構造的欠陥の3番目は、がん転移のリスク検査も転移予防薬も全く使われていないことです。
 がんは転移するから治療が難しくなるわけですから、転移を予防しないといけません。
CTC検査という転移のリスク検査があります。これは血液中を流れているがん細胞の数を検出することができるのです。これで血流中をがん細胞が流れていれば特に注意が必要ですから、さらに抗がん剤治療を追加するとか、いろいろな手だてが必要です。
 それから、骨密度が低いと全身にがんが転移するリスクが高くなることがわかっていますから、骨密度の検査をし、対策が必要です。でも、どこのがん拠点病院も、がん治療の一環として骨密度の検査はしないんです。おかしいですね。


(2)身近にあるがん転移の予防薬

 さらに、がん転移を予防する薬があります。身近にある薬でシメチジンは、転移を予防する唯一の薬です。これを1日2回お飲みになる。本来これは胃薬として使われているものですから、副作用はほとんどありません。これを長期に使って転移を予防することが大事だと思います。
ある大学病院のデータでは、進行大腸がんへのシメチジンの効果を報告しています。グラフで見ますと、進行大腸がんの標準治療の生存曲線と、シメチジンを併用した場合の生存曲線には大きな差が出るんです。これは転移を予防するからだと考えられています。シメチジンはこんなに威力があるわけですね。しかも、健保3割負担で1日たった約5円です。どうして標準治療でたった5円のものを使わないのでしょうか。
 転移は全てのがんに共通している現象ですから、シメチジンは全てのがんに共通して転移の予防効果があると考えられています。
 では、転移の予防についてがん闘病中の人は何をすればいいでしょうか。まず、さっきのCTC検査、血流中のがん細胞の検出検査、これもどこのクリニック、開業医でもしようと思えばできるんです。採血して検査センターへ出せば1週間ぐらいでデータが返ってきます。それを開業の先生等に頼んでしてもらったらいいわけですよ。
 骨密度の検査も健康保険でできますからね。骨密度のYAMという指数が80%未満の人は転移しやすいので、骨密度を強くする薬を健康保険で処方してもらえばよいわけです。
 シメチジンは健康保険適用になっている薬で、慢性胃炎等に使われます。どこのがん治療をしている病院でも、抗がん剤等を出していますから、胃の調子が悪くなった場合の処方として、大抵胃薬を出しています。そういう胃薬をもらう場合は「シメチジンを出してください」と言えばいいわけですよ。慢性胃炎に使われる薬ですからね、慢性胃炎は大抵の人はありますよ。だから、そういうものを頼んで処方してもらうことがそれぞれの方にできる方法ではないかと思います。


(3)標準治療はキセル型

スライド9 【スライド9】

 標準治療の構造的欠陥の4番目は、標準治療はキセル型ということです。(スライド9)初期の治療と手術、放射線、抗がん剤。初期治療は非常に集中して、力を入れてされます。また終末治療、これはホスピス、緩和医療ですね。これは今も注目されて、ちょっと光り輝いています。つまり両端は金属で光っています。でも、その両方をつなぐ竹の筒はガランドウになって、ここで再発予防の治療も何もないわけです。標準治療にあるのは抗がん剤だけですからね。初期の再発予防に抗がん剤をしても、そう何年も続けるわけにはいきません。副作用があります。だから一定の期間飲んだらもう終了して、あとは経過観察だけです。再発予防の手だてがないんです。だからこの竹の筒、ガランドウの部分を埋めることが必要です。そのためにはさっき申し上げたように免疫を強くしたり、転移を予防したり、あるいは漢方薬やいろいろなものを使って再発を予防していくことが大事ですね。
 あと、まだ申し上げていない方法が2つほどあります。
 1つは、抗がんビタミンD3。
 ビタミンD3というのは、世界の研究でさまざまながんの予防効果があることがわかっています。がんの予防効果イコール再発予防効果と考えることかできますから、ビタミンD3を再発予防の一つの有力な手段としてお使いになることが大事ではないか。例えば乳がんだと、がんを83%も予防しますから。ビタミンD3を飲んでいない人が100人がんになるとしたら、飲んでいる人は17人しか乳がんにならない、それぐらい予防効果があるんですね。これは1日に3~4錠のサプリメントですが、3錠飲んでも1日分約18円です。
 次に、牛蒡子というのがあります。
 牛蒡子といいますのは、ゴボウに花が咲いて実がなります。その実が牛蒡子といって漢方薬として使われています。これは難治がんの抑制作用の可能性があるということで、今、国立がんセンターとか富山大学等で臨床試験が行われています。がんの一部には。低酸素になっている領域があって、その部分には抗がん剤、放射線が効きにくいんです。そこだけがん細胞が生き残って、そこから再発してくる。その低酸素領域を破壊するのが牛蒡子の作用と考えられています。この牛蒡子もぜひ併用して再発予防に使われるといいと思います。牛蒡子は煎じ薬なんですけれども、1日分が約28円ですし、副作用は全くありません。
 闘病中の人は、今、申し上げたように自分の力でキセルのガランドウの、竹の筒の部分を埋めるようになさったらよいかと思います。



5.遅れている先進的な医療の導入

 現在、さまざまな先進的な医療が研究されています。標準治療が限界になった人のために、根治可能な先進的な医療へ橋渡しをする努力がほとんどなされていません。あるいは標準治療の中にそれを早く取り入れようという努力もなされていないのではないでしょうか。まだこれは保険適用になっていませんが、重粒子線療法とか陽子線療法というものがあります。標準治療で根治が難しい人で、重粒子・陽子線で根治の可能性のある人がいても、そちらへ紹介するといったこともされていません。
 それから、ホウ素中性子捕捉療法というのがあります。また、超高濃度ビタミンC点滴療法、あるいは済陽式栄養代謝療法。これらはいずれも、標準治療で根治不可能になった人でも根治できた事例が多数発表されていますから、そういうところに橋渡しをすることが大事ではないかと思います。
 ホウ素中性子捕捉療法をちょっとご紹介しますと、まず、ホウ素という元素を投与します。ホウ素はがんのところにだけ集まるんです。そこに原子炉から取り出した中性子を全身照射します。そうすると、中性子とホウ素が結合してがん細胞の中で中性子を出して、がん細胞だけを死滅させる。しかもこれは1回だけすればいい治療なんですね。全身のがんがどこにあっても1回だけでいい。これは本当に理想的ながん治療法ですが、まだ一部のがんしか臨床試験がされていない。もっと早くすべてのがんについて標準治療になるように取り入れていただきたい。
 最近、私も、ホウ素中性子捕捉療法の適用になるのではないかという方を既に5人も専門のところへ紹介していますからね。すべて標準治療をしているところでは「もう治療法がありません」と言われて私のところに相談に見えて、「こういう方法がありますよ」ということで紹介しているぐらいですから、標準治療の中では先進医療が無視されているということだと思います。



6.丸山ワクチンについて

 構造的欠陥の6番目は、医学界の埋蔵ダイヤモンドである丸山ワクチンが無視されていることですね。

スライド10 【スライド10】

 私、大学で木本哲夫先生に病理学を習ったんですね。その木本哲夫先生が研究なさっていたのが、丸山ワクチンを投与すると体内にコラーゲンを増殖して、がん細胞を包み込んで治癒に導くということを病理学的に証明されておられました。(スライド10)これは国際雑誌等に発表され、大変高く評価されている研究です。また、実際にがんの方々に投与して、コラーゲンが増殖しているということも明らかにされています。そういう科学的な裏付けがあります。

スライド11 【スライド11】

 また、丸山ワクチンについては心ある研究者の方々が臨床的な研究をたくさんしておられます。その中の1つが、手術不能の胃がんの方の生存曲線。(スライド11)下が標準治療だけ。丸山ワクチンを併用するとこんなによくなるんですね。生存率が23%もアップするんですね。こんな効果があるもの、しかもこの研究は既に30年も前に発表されたものです。それ以後も幾つも同様の研究が発表されています。でも、標準治療の現場では丸山ワクチンは全く無視されている。それを取り入れよう、臨床試験をしようといった姿勢は全くありません。
 では、闘病中の方は何をすればよいか。やはり闘病中の皆さんは、本日の主催者の『丸山ワクチンとがんを考える会』とか『丸山ワクチン患者・家族の会』等に参加して、丸山ワクチンを早く標準治療として認可するための運動に参加されることが大事ではないか。また、今現在、ご存じのように日本医大では丸山ワクチンが臨床試験として供給されていますので、そこを利用しながら丸山ワクチンを早くすべてのがん患者が利用できるように、運動に取り組んでいかれる必要があるのではないだろうかと思います。



7.森田療法と精神腫瘍学をベースにした「生きがい療法」

 次は、5側面のうちの心理学的な側面についてお話しいたします。
 「がん治療に心理学的なことが何か関係あるのか?」と思われるかもしれせんが、実は大きな関係があるのです。
 精神腫瘍学という、心の働きとがん治療との関係を研究している学問があります。今その精神腫瘍学世界四大研究というのがありまして、アメリカを中心にヨーロッパなどの4カ所でこの大規模な研究が行われて、いずれの研究でも心理療法を行うとがん治療効果が非常によくなる、生存率や再発予防効果が非常によくなるというデータが出ております。

スライド12 【スライド12】

 一番最近発表されたオハイオ大学の研究をご紹介します。(スライド12)
 オハイオ大学の研究では、乳がんステージⅡ、Ⅲの方々を2つのグループに分けて、1つのグループは通常の治療だけ、もう一グループは通常の治療プラス1年間の心理療法。大体週1回ぐらいのペースでの心理療法を1年間行います。そうすると、10年後の再発率が45%も減る。さらに、死亡率は56%も減ります。これは驚くべきことですね。心理療法だけでこれだけ減るのです。でも、これだけの効果がある方法が日本の標準治療では全く導入されていないし、研究もされていないことは、大変残念なことです。
 では、闘病中の皆さんはどうしたらいいのでしょうか。実は私どもは、森田療法という日本で開発された精神療法の体系と、精神腫瘍学をベースにした『生きがい療法』というがんの心理療法を考案しまして、約30年前から取り組んでおります。
この方法といいますのは、5つの生活指針がありまして、①自分が主治医のつもりでがん克服に取り組むとか、②今日1日の生きる目標に取り組む、③周囲の人に役に立つことを実行する、④不安・死の恐怖はそのままに今できる最善を尽くすとか、⑤もしもの場合の建設的準備だけはしておこうといった、がんに伴うストレスをなるべく軽く乗り越えていく指針です。
そして、①5つの生活指針、②笑わせ療法(おもしろいことを考えて人を笑わせるとか)、③がんを退治するイメージトレーニング、④生きがいを実践するといった4種類の実技を組み合わせて取り組んでいただくということを行ってきまして、これは大変心身両面に効果があることを今まで確認してきました。
 そして、例えばオハイオ大学でやっている心理療法と、私どもの生きがい療法とは大差ないのですね。ほとんど同じような内容です。それだけでも効果があるのですね。だから今、闘病中の方は、この生きがい療法は、セルフサービスでできる学習実践法ですから、参考書や教材がありますのでそれを参考に、ご自分で実行されるとよろしいかと思います。



8.がん難民を生まない手を尽くしたがん医療の実現

(1)治る見通しの無い患者への人命軽視

 さて5側面の5番目は、人道的な側面です。
 生き抜く希望を支えるようながん医療がなされていない、治る見通しのない患者への人命軽視、人権侵害が横行しているのが、今の標準治療の現場です。
例えばある大学病院へ行きますと次のような会話が日常的になされています。
医師:「標準治療はひととおりしましたが、がんは悪化しています。これ以上治療法がないのであとはホスピスへ行ってください」
患者:「どこも痛くないし仕事もできるのに、ホスピスはないでしょう。ここで治療を続けてください」
医師:「こちらには患者が多くて超多忙なので、治療法がない人が来られると困るんです」とんでもないことですが、ある大学病院の実話です。
 では、ホスピスへ行くとどうなるでしょうか。あるホスピスにかかった女性の患者さんの実例です。
患者:「先生、最近食欲不振で困っています。食欲の出る薬をください」
医者:「ここは生への執着をなくして清らかな気持ちになって、死を受け入れるようにするための場所です。あなたがまだ生きたいともがいているなら、ここに来なくてもよろしい」
このような、とんでもないことを言うんですよね。


(2)患者組合「生きがい療法ユニオン」

 私が好きな正岡子規の句に、この状況が詠まれています。『啼きながら 蟻にひかれる 秋の蝉』
 では、闘病中の人はどうしたらいいのでしょうか。やはり以上申し上げたこういう標準治療の欠陥を何とか変革して、手を尽くしたがん医療を実現するような医療に変革していかなければいけないと思うのです。そういう運動が必要ではないかと私は思います。

スライド13 【スライド13】

 実は、2011年の夏に岡山でがん闘病中の有志の方の呼びかけで、手を尽くしたがん医療を目指す患者組合、通称「生きがい療法ユニオン」というものが立ち上げられました。(スライド13)団結してお互いの命を守っていこう、手を尽くしたがん医療を実現させていこうという患者組合なんです。
 この組合の基本方針は、1、各組合員がベストのがん治療を目指すための判断力、行動力を養うため、いわゆる患者力を強くする学習活動を行う。2、手を尽くした治療が受けられずがん難民状態にある組合員については、本人からの要請があればその救援・支援活動に取り組む。3、日本のがん医療ががん難民を発生させない手を尽くした医療への変革を目指して、必要な社会活動を行うということで、今、微力ながら活動を始めております。
 その方針は、これも正岡子規の句の中に出てまいります。『小錦に 五人がかりの 角力かな』。がん標準治療において、小錦のような大きな力を持っている権力に対しても、がん闘病中の人が力を合わせてかかっていけば、それを変革することができるだろうということが、正岡子規の句に既に詠まれております。
 今後、本日の主催者の『丸山ワクチンとがんを考える会』や『丸山ワクチン患者・家族の会』を初め全国の心ある患者会の方々と力を合わせて、手を尽くしたがん医療を目指していきたいと思いますので、今後ともどうかよろしくお願いいたします。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)