講演会(ご案内・ご報告)

第2回講演会

プログラム2
『統合医療を超えてホリスティック医療へ』
帯津三敬病院名誉院長:帯津 良一先生


1.西洋医学によるがん治療の限界を感じ、中国医学に注目

帯津三敬病院名誉院長:帯津 良一先生 私の病院でも丸山ワクチンは使っています。
私は、東大病院のときも、駒込病院のときも、患者さんの希望があれば、丸山ワクチンを使いました。断ったことは一度もありません。私が今の病院を作ったのは1982年でした。それまでは駒込病院に勤務していました。1975年に東大病院から駒込に赴任しました。当時、有楽町に都庁があって、そこで辞令をもらって、その足で駒込病院に向かいました。5月でしたから、真っ青な空でした。私は感慨深い思いで、建物が建ったばかりの新しい駒込病院の前に立ちました。「これでがんが克服できるぞ」と野望を抱いただけです。しかし、野望はもろくも崩れてしまいました。
私の専門は食道がんでした。技術が非常に進歩して、比較的安全な手術もできるようになっていました。しかし、完璧と思えるような手術をしても、しばらくすると、その患者さんが再発で戻ってくるというのは、決して珍しいことではありませんでした。私は、どうしてそんなことになるのだろうと、考え込んでしまいました。これは、西洋医学そのものに限界があるのではないだろうかと、そういう結論に達して、中国医学を勉強することにしました。実際に中国へ行って、どのようにがん治療が行われているかを見てきました。そしたら、漢方薬や鍼灸、気功によって、非常に成果を上げているのを目の当たりにしました。これからは、西洋医学だけでなく、中国医学を取り入れるべきだと、意を強くして帰国したわけです。



2.西洋医学と中国医学を結合した新しいがん治療の幕開け

そして、さっそく、駒込病院で、漢方薬や気功を始めました。冷ややかな目で見られました。だれも相手にしてくれません。医療者が相手にしないのは最初からわかっていました。それだけならいいのですが、患者さんも相手にしてくれないのには参りました。患者さんが、「先生、そんなことやってもだめでしょう」なんて言うんですから、こちらもがっかりしてしまいます。
これじゃいけないなと、半ばあきらめる気持ちも出てきました。でも、予感があったんですね。必ずいずれ東から風が吹く・・・と。もっとも、中国は西ですから、東の風というのはおかしいのですが、東洋医学だから、東と思ったんですね。それなら、今のうちから手をつけようということで、生まれ育った川越に病院を建てました。これが、さきほども言いましたが、1982年のころです。
77床の病院でした。ほかの病院と違うところは、病院内に道場を作ったことでした。だれもが、「病院に道場とはどういうことだ」と疑問に思ったようです。反対した人もいました。私はあまり自己主張はしない方ですが、これだけは、妥協できませんでした。今でもその道場はあります。でも、手狭になってしまって、同じ敷地内ですが、別棟を建てました。昔の倍くらいの大きさです。そんな状態で、西洋医学にプラスして、漢方薬や鍼灸、気功をやる病院が出来上がったわけです。私は、西洋医学と中国医学ですから、中西医結合医学というふうに呼んでいました。



3.中西医結合医療から人間丸ごとを見るホリスティック医学へ

そのころ、ホリスティック医学という考え方がアメリカから入ってきました。日本にもホリスティック医学協会が設立されたのが1987年でした。ホリスティックというのは、全体という意味のようです。でも、全体医学というと、ちょっとニュアンスが違います。人間丸ごとを見る医学というふうに、私は説明しています。人間丸ごとというのは、「肉体」「心」「いのち(魂)」をすべて丸ごとにして見るということです。この方法論は、まだ確立していません。
ですから、次善の策として、体に働きかける方法と心に働きかける方法、いのちに働きかける方法を、一人の患者さんに重ね合わせるようにして、ホリスティックに近づけようとしています。本当は、それではホリスティックではないのですが、そこは今のところ仕方がないかなと思っています。
体に働きかける方法が西洋医学です。心に働きかける方法は各種心理療法、さらには心の状態をもっときめ細かにつかんでいく方法も必要です。いのちに働きかけるのが、さまざまな代替療法。中国医学、インド医学、ホメオパシー、サプリメント、音楽療法、アロマテラピーなどが入ってきます。ですから、ホリスティック医学をやっている限りは、代替療法に手を染めざるを得ません。もちろん、丸山ワクチンも、代替療法として、最初から私の病院では採用しています。
代替療法が世界的に台頭してきたのは、1990年に入ってからのことでした。がんだけでなく、西洋医学だけでは治りにくい病気が増えてきて、西洋医学だけでは不十分だという気持ちが、人々の間に起こってきて、それが代替療法への注目につながってきたのだと思います。
日本でも、欧米の後に続くという形で代替療法への関心が高まってくると、私は代替療法の専門家だと思われるようになってきて、原稿や講演の依頼が増えてきました。私はいつも、「私の本業はホリスティック医学ですから」と、代替療法の専門家ではないことを強調するのですが、でも、代替療法の専門家だと思われることを嫌っているわけではありません。逆に、とてもいいことだと思っています。代替療法は、多かれ少なかれ、体だけでなく、心やいのちに目を向けています。心やいのちにはエビデンス(科学的根拠)がありませんから、西洋医学からは低く見られるわけですが、本当は、体だけを見る医学よりも、心やいのちを見る医学の方が本来の医学です。私は、本来の医学の専門家とみられているなら、これはいいことだとおもっているのです。



4.人間は本来、悲しくて寂しいものだという話からスタート

私の病院では、入院して一週間くらいの間に、朝8時すぎから戦略会議を開きます。私と患者さんと、看護師さんも一人ついています。文字通り、どんな戦略でがんに立ち向かうかということを話し合います。コミュニケーションがネットワークになって、それが場になると私は思っています。患者さんと私たち医療者が共有する場を整えなければなりません。それができないと、何をやってもだめです。場を高めることが、この戦略会議の目的でもあります。
その順番ですが、まずは心の問題をテーマにします。心のもち方が病状に与える影響は非常に大きいものがありますから。病の中で、どんな心で生きていけばいいのかを話し合います。私が最初に言うことは、「人間は、本来、悲しくて寂しいものだ」ということです。人間は、もともと悲しく寂しいのだから、あなたは悲しくていいし、不安でいいんだよということです。私も悲しいし寂しい、不安だ。それでいいんです。悲しみという大地があって、そこに私たちは希望の種をまき、育てていくんですね。よく、明るく前向きに生きなさいと言われますが、明るく前向きな大地はもろいですね。すぐにグラグラときます。悲しみの大地はどしっとしていて、ちょっとの地震ではぐらつきません。悲しみの大地に希望が芽を出すと、そこにときめきが出てきます。そして、ときめきが続くと、明るく前向きに生きるエネルギーが生まれてきます。
しかし、ずっと明るく前向きにいられるものでもありません。やがては、また悲しみや寂しさ、不安に戻っていって、またそこに希望の種をまくわけです。そうした循環が人の心にはあります。私の経験では、悲しみ徹してしまっていいと考えている人は、意外と経過がいいですね。この世は、悲しいんだと決めつけてしまうことで、心が安定するのでしょう。



5.ホリスティック医学には、高いレベルの西洋医学が不可欠

次に食事のことを話します。うちの食事は、「粗食のすすめ」の幕内秀夫さんが指導してくれていますから、和食の粗食が基本です。でも、いつも和食の粗食ではいけません。ときには、すき焼きでも食べる。すると、心がときめきます。このときめきが大切です。そして、気功です。気功は、病院を開設したときからやっています。開設当初は、「気功なんかやってがんが治るんですか」という雰囲気でしたが、今は、みなさん、自信に満ちた顔で励んでいます。
ホリスティック医学では、養生と治療の区別がありません。病というステージだけを相手にするのではなく、生老病死、死後の世界まですべて相手にします。だから、病気が治ったからいいとか、治すことばかりに神経を集中するというものではありません。生き方や死に方といった哲学的な領域まで考えていく必要があるのです。
そうしたことの上に、西洋医学で何ができるのか、それもしっかりと考えます。ホリスティック医学というと、西洋医学は使わないと思っている方もいますが、そんなことはありません。使わないどころか、高いレベルの西洋医学がないと、ホリスティック医学にはならないのです。腹水や胸水がたまれば、水を抜く必要があります。抗がん剤も、症状によっては使う必要があります。抗がん剤をやろうと担当の医師に言われて、私は抗がん剤をやりたくないのでこの病院へ来たんだと、私のところにねじ込んでくる患者さんもいます。やりたくなければやらなくていいんだけど、医学的に公平に見て、抗がん剤がいいよと担当の医師が判断したんだったら、話をよく聞いて、納得したらやった方がいいよと話します。もちろん、納得しなかったら断るべきです。



6.丸山ワクチンとビタミンC大量療法と太極拳でがんが消えた

さらにここに代替療法が加わってきます。漢方薬、鍼灸、ホメオパシー、アロマテラピー、サプリメントはどうだろうとやるわけです。その中に丸山ワクチンも入っています。
丸山ワクチンに関しては、非常に印象的な症例があります。この病院をはじめたころのことです。胃がんの再発で、膀胱にも併発している厳しい状態の患者さんでした。食べられないので中心静脈栄養をしていて、点滴をしながら太極拳をしていました。食べられないとなると、口から入れるという治療はできません。そこで丸山ワクチンとビタミンC大量療法をやりました。そしたら、大きながんが消えてしまったのです。
何が効いたかわからないのですが、やったことは、丸山ワクチンとビタミンC大量療法、それに太極拳です。丸山ワクチンのよさは、まずは値段が安いことです。それに副作用がない。そして、今話した患者さんのように食べられない人でも使えるという点です。そうした戦略ができると、それを一生懸命に毎日やるわけです。ただし、みんながうまくいくわけではありません。見直しが必要がときもあります。病状が急速に変化しているときには、2週間くらいで見直しをします。小康状態のときは、だいたい2ヶ月くらいで退院するとして、退院のちょっと前に、家ではどういう戦略でいくのか、ミーティングをします。



7.いかに病院の場を高めるかがもっとも重要なテーマ

あとは、患者の会があって、これがとてもいい働きをしてくれます。元がん患者だったり、闘病中だったりする人たちの集まりですから、とてもいいアドバイスをしてくれます。ときには、医師が抗がん剤をやった方がいいというのに、患者の会の人がやめた方がいいというようなことで、患者さんも迷うことがあったりもしますが、患者さんにしてみれば大きな支えになっていると思います。
21世紀養生塾というのもやっています。半年単位で、外部の人たちが中心になって、私の話を聞いて、気功をするという会ですが、最近は、入院患者さんも参加するようになってきました。そして、もっとも大切なことは、病院の場を高めることです。病院の場が高まれば、患者さんが病院へやってきて、気持ちいいと感じるはずです。病院というのは、そういう場所でないといけないのです。
五木寛之さんと対談したとき、五木さんは病院は、気が悪いから行かないと言っていました。病院の場を高めるには、医師も看護師も事務職員も、みんなが覚悟と志をもって仕事をする必要があると私は言っています。いかに病院の場を高めるか、これは重要なテーマだと思います。
最後に、たくさんある代替療法をどうチョイスするかをお話します。まずは、値段が適正であることです。長く続けることができないと、いくらいい治療でも意味がありません。その治療の関係者が断定的な言い方をしないかどうかもチェックの必要があります。これをやれば治るとか、あれはやっちゃいけないと言う代替療法家がけっこういます。こうした言い方をされたらちょっと考えた方がいいでしょう。
そして、人相のいい人にかかることです。これだけを守れば大丈夫です。私が今、もっとも注目して、実際に治療に使っているのがホメオパシーです。ホメオパシーは、薬草のエキスを徹底的に薄めて、物質の分子すら存在しないただの水になったものを処方します。「ただの水」と聞いて、私は丸山ワクチンのことを思いました。丸山ワクチンの悪口は、「あれはただの水だ」というもの。ホメオパシーと共通するものがあるのではと思います。それにしても、何も知らないのに、あんな悪口をよく言うものだと思います。見たことも使ったこともないものを評価するなどというのはおかしな話です。そんなことも含めて、患者さんが気持ちよく過ごせる場を作れば、がんはもっともっと治るようになるでしょう。にはほとんどなかったのです。私が三重県多気郡明星村にいるころは日本人の回虫感染率62%です。回虫が気持ちの悪いもので追い出しました。回虫の感染率が5%を切った1965年から花粉症、ぜんそく、アトピーが出てきたわけです。


参考