講演会(ご案内・ご報告)

第4回講演会

プログラム1
『ご挨拶』
NPO「丸山ワクチンとがんを考える会」理事長
東京大学名誉教授:篠原 一


 きょうはお寒いところをお集まりいただきましてありがとうございました。NPO「丸山ワクチンとがんを考える会」の理事長をしております篠原でございます。
 簡単にこの会の趣旨を申し上げます。一昨年の末に日本医療政策機構という民間の研究団体から報告書が出ました。そこで“がん難民”という言葉が使われておりまして、日本では世論調査によると68万人の“がん難民”がいるのだそうで、日本のがん患者の全体の53%が“がん難民”なのだそうです。“がん難民”とは変な言葉ですけれども、患者さんが納得できる治療が受けられない、自分がこれをしたいと思っても拒否されるということも含めてそういう人を“がん難民”というのだそうですが、半分以上の人が“がん難民”になっているということですから、非常に異常なことだと思います。もちろん、今でもそうなのですが、丸山ワクチンに限っていうと、打ちたいというとお医者さんから拒否されて、打ちたいけれども打てないというような事態が今でもたくさんありまして、私のところに電話がしょっちゅうくるのですけれども、そういう“がん難民”を少しでも少なくしたいというのも、このNPOをつくりました動機の一つでございます。そのためには研究会を開催して、最近の研究状況を広くお知らせすることが大切となります。
 この研究会の目標の一つは基礎研究です。その基礎研究の結果をなるたけご講演いただくということと、もう一つは、最近の臨床の結果をお医者さん、あるいはがん患者及びその家族が共有したいという趣旨でございまして、従って講演会では原則として臨床的なものと基礎科学的なものとの2つをやろうということになりまして、ちょうどそれが4回目になりました。きょうも第一線のお二方の先生にそういうお話をいただきたいと思っております。
 私もがん患者なのですけれども、がんというのはおそらく一発で、あるいは一つの療法ですべて終わるというほど簡単なものではなく、そう生やさしい病気ではないと思うんですね、あらゆる我々の治療法を動員して、これにあたらないと到底克服ができない問題であると私たちは考えています。おそらくきょうおいでになっていると思いますけれども、最近、『がん難民の哀歓』という本をお書きになりました織田孝一郎さんという方がおられまして、このご本をぜひお読みいただきたいのですけれども、要するに余命2年といわれた人、奥様なのですが、丸山ワクチンとリンパ球治療という2つを併用されて、そして結局18年間生きられたという記録を書いた本でございます。そのこと自体も大切ですけれども、その中でがんが一回免疫療法でおさまっても、またポコポコとリンパ球が腫れてくるわけです。そのときに放射線の先生とか内科の抗がん剤の先生に相談をして、とにかくがんの発育を抑えるぐらいにとどめるソフトな措置をしてもらう、そうしながら同時に免疫療法をやっていくということで18年生きられたということがこの本の中に書かれております。これは典型的な例でありまして、もてる総力を投入しなければがんには対抗克服できないと私たちは患者として思っているわけで、そういう意味でも織田さんの奥様の例にみられるようにいろいろな先生が協力してくださればたいへんありがたいと思います。ある意味では織田さんは“がん難民”と称してはおりますけれども、非常に恵まれた状況におられたのだというふうに思っております。
 そういう意味で、私たちは一つのことだけではなくて、免疫療法を基本にすえながら全体の状況ということを常に踏まえて考えたい。ですからここの名前も「丸山ワクチンとがんを考える会」ということになっておりまして、必ずしも丸山ワクチンだけをもっぱら近視眼的に追うのではありませんので、おそらくきょうのお話ももっと広いお話が聴けることと思っています。長くなりますのでこれで終わりますが、きょうはきっと我々も参考になるおもしろいお話、おもしろいと言っては語弊がありますが、有益なお話がたくさん聴けるものというふうに期待をしております。簡単でございますが、ご挨拶にかえさせていただきます。よろしくお願いします。(拍手)